基礎知識2026年4月20日最終更新: 2026.04.20

この記事の要点

  • 寄与分は民法第904条の2に基づく、被相続人の財産維持・増加に特別な貢献をした相続人が、法定相続分とは別に取得できる金額の制度
  • 寄与の類型は5つ:①家事従事型(事業協力)、②金銭等出資型、③療養看護型(介護)、④扶養型、⑤財産管理型
  • 寄与分が認められるには「特別の寄与」が必要で、夫婦間の協力義務(民法第752条)や親族間の扶助義務(民法第877条)の範囲内では認められない
  • 寄与分は遺産分割協議または家庭裁判所の調停・審判で決定される。2019年7月施行の改正で、相続人以外の親族(子の配偶者など)にも特別寄与料請求権が認められた(民法第1050条)

「長年、親の介護を一人で続けてきた」「家業を無償で手伝ってきた」「親の事業に資金を提供した」――こうした特別な貢献をした相続人が、ほかの相続人と同じ相続分しか受け取れないとしたら、不公平感が生まれます。この不公平を是正するために設けられているのが「寄与分」という制度です。

寄与分は民法第904条の2に規定され、被相続人の財産維持や増加に「特別の寄与」をした相続人が、法定相続分に上乗せして遺産を取得できる仕組みです。この記事では、寄与分の対象となる5つの類型、認められるための要件、計算方法、2019年改正で新設された特別寄与料制度まで、西東京市の専門家がわかりやすく解説します。

寄与分とは(民法第904条の2)

寄与分とは、共同相続人の中に被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者がいる場合、その者の相続分を法定相続分よりも増やす制度です。民法第904条の2第1項は「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする」と定めています。

つまり、相続財産の総額から寄与分を差し引いた残りを「みなし相続財産」として法定相続分で分け、寄与した相続人にはその法定相続分に寄与分を加算した額を取得させる、という考え方です。寄与分は「相続人の貢献に報いる」という相続法の重要な調整機能を担っています。

寄与分が認められる5つの類型

家庭裁判所の実務では、寄与行為を以下の5つの類型に分類して評価することが一般的です。それぞれの特徴を理解しておきましょう。

①家事従事型(事業協力)

被相続人が営む農業・商店・工場などの事業に、相続人が無償またはそれに近い形で従事し、事業の維持・発展に貢献した類型です。例えば、長男が父の経営する商店で長年無給で働き、店舗の売上維持や拡大に寄与した場合などが該当します。一般的な労務報酬と実際の対価との差額が寄与分の評価基準となります。

②金銭等出資型

被相続人に対して金銭・不動産その他の財産を提供し、被相続人の財産の維持または増加に貢献した類型です。例えば、子が親の住宅ローンを肩代わりして返済した、親の事業の運転資金を出資した、親の自宅の改築費用を負担した、といったケースが該当します。出資額と被相続人の財産増加額の関連性が重視されます。

③療養看護型(介護)

被相続人の療養看護や介護に従事し、本来であれば付き添い介護人や介護サービスを利用すべきところを相続人が無償で担うことにより、被相続人の財産の流出を防いだ類型です。寄与分が問題となるケースで最も多いのがこの類型です。要介護度・看護期間・看護内容の程度などが総合的に判断されます。

④扶養型

被相続人を継続的に扶養し、本来支出されるべき生活費の支出を免れさせることで被相続人の財産維持に貢献した類型です。同居して食事を提供する、生活費を毎月送金するなどが該当します。ただし、夫婦間や親子間には法律上の扶助義務(民法第752条・第877条)があるため、その範囲を明らかに超える「特別の寄与」が求められます。

⑤財産管理型

被相続人の財産(賃貸不動産・株式など)の管理を行い、本来必要となる管理費用の支出を免れさせ、財産の維持・増加に貢献した類型です。例えば、親が所有する賃貸アパートの入居者対応・修繕手配・賃料管理を相続人が無報酬で行ってきたケースなどが該当します。

寄与分が認められる要件

寄与分は「特別の寄与」がなければ認められません。家族として通常期待される範囲の協力では足りず、以下の要件を総合的に満たす必要があります。

  • 「特別の寄与」であること:夫婦間の協力義務(民法第752条)や直系血族・兄弟姉妹間の扶養義務(民法第877条)の範囲を明らかに超える貢献であることが必要です
  • 無償または無償に近い行為であること:相応の対価を受け取っている場合は寄与分は認められません。給与を受け取って事業を手伝っていたケースなどは原則として対象外です
  • 継続性があること:一時的・短期間の貢献では足りず、相当期間継続して寄与行為を行っていたことが必要です
  • 専従性があること(療養看護型の場合):仕事を辞めて介護に専念した、片手間ではなく相当の時間を費やしたといった専従性が求められます
  • 因果関係があること:その寄与行為と被相続人の財産の維持・増加との間に明確な因果関係が認められる必要があります

寄与分の計算方法

寄与分の金額は類型ごとに評価方法が異なります。実務で最も多い「療養看護型(介護)」の計算式を例として紹介します。

療養看護型の計算例:介護報酬基準額 × 日数 × 裁量割合

たとえば、介護保険における介護報酬基準額が1日あたり8,000円、介護に従事した日数が1,000日、裁量割合(同居家族による介護のため第三者介護人より割引)を0.7とした場合、寄与分の目安は以下のようになります。

8,000円 × 1,000日 × 0.7 = 560万円

裁量割合は、介護の専従度・要介護度・親族関係などを考慮して0.5~0.8の範囲で設定されることが多くあります。実際の評価には介護記録(要介護認定書、ケアプラン、介護日誌など)の客観的資料が重要です。

特別寄与料制度(民法第1050条)

2019年7月1日施行の改正民法により、相続人ではない親族(被相続人の子の配偶者など)も、被相続人の療養看護等によって財産の維持・増加に貢献した場合、相続人に対して金銭の請求ができる「特別寄与料」制度が新設されました(民法第1050条)。

従来は、長男の妻が義父母を介護しても、妻は相続人ではないため寄与分を主張できませんでした。改正後は、被相続人の親族であれば(6親等内の血族・3親等内の姻族)、無償で療養看護を行った貢献に応じて特別寄与料を請求できるようになりました。

ただし、特別寄与料の請求には「相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内、または相続開始の時から1年以内」という厳格な期間制限があるため注意が必要です。

寄与分を主張するための手続き

寄与分は自動的に認められるものではなく、相続人自身が主張する必要があります。手続きは以下の3段階で進みます。

遺産分割協議で合意する

まずは相続人全員で行う遺産分割協議の中で、寄与分の存在と金額について合意するのが原則です。寄与の事実を客観的資料(介護日誌、振込記録、契約書など)で示し、ほかの相続人の理解を得ることが重要です。協議で合意できれば、寄与分を反映した遺産分割協議書を作成します。

家庭裁判所の調停を申立てる

協議でまとまらない場合は、家庭裁判所に「寄与分を定める処分の調停」を申し立てます。調停では調停委員が間に入り、双方の主張と資料を整理しながら合意形成を目指します。寄与分の調停は遺産分割調停と併合して進められるのが通例です。

審判で決定してもらう

調停でも合意に至らない場合は、自動的に審判手続きに移行し、家庭裁判所の裁判官が寄与分の有無と金額を決定します。審判では客観的証拠が決定的に重要となるため、日頃から介護記録・出資の振込記録・事業従事の勤務記録などを残しておくことが大切です。

寄与分が認められる場合の相続分計算

具体例で計算してみましょう。

【ケース】相続財産5,000万円、相続人は配偶者・長男・次男の3人、長男に寄与分500万円が認められた場合

  1. みなし相続財産の算出:5,000万円 − 500万円(長男の寄与分) = 4,500万円
  2. 各相続人の法定相続分の計算:配偶者1/2 = 2,250万円、長男1/4 = 1,125万円、次男1/4 = 1,125万円
  3. 長男の最終取得額:1,125万円 + 500万円(寄与分) = 1,625万円
  4. 最終的な配分:配偶者2,250万円、長男1,625万円、次男1,125万円(合計5,000万円)

このように、寄与分は「みなし相続財産」を計算する際に控除し、寄与した相続人が最後に上乗せ取得するという仕組みです。

寄与分と特別受益の違い

寄与分とよく混同されるのが「特別受益」(民法第903条)です。両者は方向性が真逆の制度です。

  • 寄与分:被相続人の財産維持・増加に貢献した相続人の取得分を「増やす」制度。法定相続分にプラスする方向
  • 特別受益:生前贈与等で特別な利益を受けた相続人の取得分を「減らす」制度。相続財産に持ち戻して計算する

同じ相続で寄与分と特別受益の双方が問題となるケースもあり、両制度を理解した総合的な遺産分割協議が必要です。

当センターでの対応事例

東久留米市にお住まいのEさんは、要介護4の父親を10年間にわたって自宅で介護してこられました。父の死亡後の相続では、長男であるEさんと、遠方に住む弟・妹2人の3人が相続人となりましたが、当初の協議では弟・妹から「介護は家族として当然のこと」と寄与分を否定する発言がありました。

当センターでは、Eさんが残していた介護日誌、要介護認定書、介護保険サービスの利用明細、医療機関との連絡記録などを客観資料として整理し、療養看護型寄与分の根拠を明確化。介護報酬基準額に基づく試算を提示しながら丁寧に協議を重ねた結果、遺産分割協議の中で長男(Eさん)に500万円の寄与分を計上することで全相続人の合意を得ることができました。家庭裁判所の調停に持ち込まずに解決できた事例です。

まとめ

寄与分は、被相続人の財産維持・増加に特別な貢献をした相続人の労苦に報いる重要な制度です。介護や事業協力、財産出資といった目に見えにくい貢献を、適正に評価してもらうためには、客観的な資料の準備と法的根拠に基づく主張が不可欠です。

2019年改正で相続人以外の親族にも特別寄与料が認められるようになり、寄与分制度はより使いやすくなりました。ただし、6ヶ月という短い期間制限があるため、早期の専門家相談が重要です。

当センターでは西東京市・東久留米市・清瀬市・新座市を中心に、寄与分・特別受益を含む遺産分割協議のサポートを多数手がけています。無料相談を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

遺産分割協議書の作成遺留分相続の専門家相談についても、あわせてご確認ください。

当センターの実績 当センターでは、東久留米市にお住まいのEさんが10年間続けた父親の介護について、客観的資料を整理して療養看護型寄与分500万円を遺産分割協議で計上し、家庭裁判所の調停を経ずに合意形成を実現した事例があります。

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※免責事項:本記事は2026年4月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。

この記事の監修

株式会社 相続サポートセンター(みらいグループ)

税理士法人みらいを中心に、行政書士・社労士・不動産の専門家が連携。西東京市を拠点に、相続手続き・遺言書作成のワンストップサポートを提供しています。

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