基礎知識2026年5月7日最終更新: 2026.05.07

この記事の要点

  • 相続人不存在とは、戸籍上の相続人がいない、または全員が相続放棄した場合の状態(民法第951条以下)
  • 相続財産は相続人不存在の場合「相続財産法人」となり、利害関係人や検察官の請求で家庭裁判所が相続財産清算人を選任(民法第952条、2023年4月改正で旧「相続財産管理人」から名称変更)
  • 特別縁故者(民法第958条の2):被相続人と生計を同じくしていた者、療養看護に努めた者、その他特別の縁故があった者は、清算後の残余財産の分与を請求可能(権利消滅後3ヶ月以内)
  • 特別縁故者にも分与されない財産は最終的に国庫に帰属する(民法第959条)

少子化や生涯未婚率の上昇を背景に、「相続人がいない」相続のご相談が増えています。配偶者・子・父母・兄弟姉妹のいずれもいない場合や、いても全員が相続放棄した場合、被相続人の財産はどうなるのでしょうか。

本記事では、民法第951条以下に基づく相続人不存在の場合の手続きと、令和3年改正で名称が変わった「相続財産清算人」、特別縁故者への分与、最終的な国庫帰属までの流れを、西東京市の専門家が解説します。

相続人不存在とは(民法第951条)

民法第951条は、「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする」と定めています。これを「相続財産法人」といいます。

相続人不存在は、戸籍上の相続人が誰もいない場合のほか、相続人がいても全員が相続放棄をした場合や相続欠格・廃除に該当した場合にも生じます。この状態のままだと相続財産の管理・処分ができないため、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任して清算手続きを進めます。

相続人不存在となるケース

戸籍上相続人がいない

配偶者・子・直系尊属(父母・祖父母)・兄弟姉妹・代襲相続人(甥姪まで)のいずれも存在しない場合です。生涯独身で兄弟姉妹もすでに亡くなっており、甥姪もいないようなケースが該当します。

相続人全員が相続放棄

相続人がいても、債務超過などを理由に全員が家庭裁判所に相続放棄の申述をして受理された場合、最初から相続人でなかったとみなされ(民法第939条)、相続人不存在の状態となります。

相続人全員が相続欠格・廃除

民法第891条の相続欠格事由(被相続人を故意に死亡させた者など)に該当する場合や、家庭裁判所により廃除(民法第892条)された場合も、相続人としての資格を失い、結果として誰も相続人がいなくなることがあります。

相続財産清算人の選任(民法第952条)

2023年4月1日施行の民法改正(令和3年法律第24号)により、従来の「相続財産管理人」は「相続財産清算人」に名称変更され、権利義務関係も整理されました。これは、相続財産の管理を目的とする「相続財産管理人」(改正後民法第897条の2)と、清算を目的とする「相続財産清算人」(改正後民法第952条)が混在していたものを整理する改正です。

申立人

相続財産清算人の選任を申し立てることができるのは、利害関係人または検察官です(民法第952条第1項)。利害関係人には次のような人が含まれます。

  • 被相続人の債権者(貸付金の回収を求める者)
  • 特別縁故者(被相続人の世話をしていた者など)
  • 遺言執行者
  • 共有持分権者(被相続人の共有不動産の他の共有者)

申立先

申立先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

予納金(数十万〜100万円超)

相続財産清算人の報酬や手続費用は、原則として相続財産から支払われますが、財産が乏しい場合に備えて、申立人は数十万円〜100万円超の予納金を裁判所に納める必要があります。予納金の額は事案により異なりますが、東京家庭裁判所では概ね20万円〜100万円程度とされる運用が知られています。

相続財産清算人の手続きと期間

公告・債権者への弁済

清算人が選任されると、家庭裁判所は遅滞なくその旨を公告します(民法第952条第2項)。改正後の民法では、この選任公告と相続人捜索の公告(旧民法第958条相当)が一本化され、公告期間も6ヶ月以上とされています。

清算人は2ヶ月以上の期間を定めて、相続債権者および受遺者に対する請求申出の公告も行い(民法第957条第1項)、申し出のあった債権者・受遺者に対し相続財産の中から弁済します。

相続人捜索の公告(民法第957条、6ヶ月以上)

清算人選任の公告期間(6ヶ月以上)が経過しても権利を主張する相続人が現れなければ、相続人としての権利は確定的に失われます(民法第958条)。改正前は「相続人捜索の公告」が別途行われ手続きが3段階に分かれていましたが、改正により2段階に簡素化されました。

特別縁故者への財産分与(民法第958条の2)

特別縁故者の3類型

民法第958条の2第1項は、相続人の捜索期間満了後、清算後の残余財産がある場合に、家庭裁判所は次のいずれかに該当する者の請求により、財産の全部または一部を分与できると定めています。

  • ①被相続人と生計を同じくしていた者:事実婚のパートナー、内縁の配偶者、長年同居していた親族など
  • ②被相続人の療養看護に努めた者:近隣の友人、ヘルパー、世話をしていた知人など(職務として看護した医師・看護師は通常含まれない)
  • ③その他被相続人と特別の縁故があった者:地域住民として長年支援していた者、慈善団体(被相続人が生前から関係していた場合)など

特別縁故者は、自然人だけでなく地方公共団体や法人も該当する余地があります。

申立期限:相続人捜索期間満了後3ヶ月以内

特別縁故者の財産分与の請求は、相続人捜索の公告期間満了後3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります(民法第958条の2第2項)。この期限を過ぎると、財産分与の道は閉ざされてしまいます。

国庫への帰属(民法第959条)

特別縁故者への分与後もなお残余財産がある場合、または特別縁故者がいない場合、最終的に相続財産は国庫に帰属します(民法第959条)。

不動産については、令和5年4月施行の「相続土地国庫帰属制度」とは別の制度ですので注意が必要です。相続人不存在による国庫帰属は民法第959条に基づき相続財産清算人を経由する手続きであり、相続土地国庫帰属法は相続人がいる場合に相続人が自ら土地を国に帰属させる制度です。

相続人不存在を防ぐための対策

相続人がいない、または特定の人に財産を遺したい場合は、生前のうちに対策を講じることが重要です。

  • 遺言書の作成:相続人不存在のままだと、最終的に国庫に帰属する。遺言書(公正証書遺言が確実)で世話になった人や慈善団体への遺贈を定めておけば、希望どおりの承継が可能
  • 養子縁組:世話になっている人を養子にすることで法定相続人とする方法。実態のない縁組は否認リスクがあるため慎重な検討が必要
  • 死因贈与契約:遺言と類似するが、契約として書面で残せる
  • 家族信託の活用:信頼できる人に財産管理を委託しつつ、自身の死亡時の承継先を定める

当センターでの対応事例

新座市にお住まいだったLさん(生涯独身・兄弟姉妹はすでに死去・甥姪もなし)が亡くなられた後、長年Lさんの生活支援をしていた近隣のMさんから当センターにご相談がありました。Lさんに法定相続人はおらず、預貯金と自宅不動産が相続財産として残されていました。

当センターでは、Mさんが特別縁故者として財産分与を申し立てるため、まず相続財産清算人選任の申立てから支援。さいたま家庭裁判所への予納金を準備し、約7ヶ月の公告期間を経た後、Mさんが「療養看護に努めた者」「その他特別の縁故があった者」として財産分与の申立てを実施。Lさんの自宅不動産と預貯金の一部がMさんに分与される審判が確定しました。

西東京市・東久留米市・清瀬市でも、おひとりさま相続のご相談が増えています。

まとめ

相続人不存在の場合、民法第952条に基づき家庭裁判所が相続財産清算人(2023年4月の改正で旧「相続財産管理人」から名称変更)を選任し、債権者への弁済を経て、特別縁故者への分与(民法第958条の2)が検討され、最終的には国庫に帰属します(民法第959条)。

手続きには予納金や1年以上の期間が必要なため、生前のうちに遺言書を作成しておくことが、ご自身の意思に沿った財産承継の最も確実な方法です。相続放棄相続土地国庫帰属制度もあわせてご確認ください。

当センターでは無料相談で、おひとりさま相続・相続人不存在のご相談を承っております。

当センターの実績 西東京市・新座市・清瀬市のおひとりさま相続案件で、相続財産清算人選任申立て・特別縁故者の財産分与申立てを多数支援。司法書士・弁護士と連携してワンストップで対応します。

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※免責事項:本記事は2026年5月時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、専門家にお問い合わせください。

この記事の監修

株式会社 相続サポートセンター(みらいグループ)

税理士法人みらいを中心に、行政書士・社労士・不動産の専門家が連携。西東京市を拠点に、相続手続き・遺言書作成のワンストップサポートを提供しています。

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